第5話 / 闖入者

名古屋から大阪へは近鉄アーバンライナーを利用する。切符の方は一週間前に購入しているのだが、6人の席をまとめてとることができず、3人・3人に分かれてすわることになった。深谷さん、小木曽さん、そして私が車両の最前列にすわった。ここは人が通るたびに通路のドアが開くのでどうも落ち着かない。まあ前が壁になっているから、2時間静かに面壁していれば達磨さんのように何か悟れるかもしれない、などとくだらないことを考えていたら、斎藤さんがやってきて一人に2本ずつのビールを置いていった。やはり私のような煩悩多き凡人に悟りは無理のようで、すぐにビールを飲み始めてしまった。

ビールが行きわたると、今度は私が食べ物を車両の中ほどにすわる斎藤さんと山本君に渡しに行った。すると本来和泉さんがすわるはずだった斎藤さんと山本君のあいだの席に見知らぬ男がすわり、斎藤さんと何やら問答している。どうやらその男は指定券なしで乗り込んできてたまたま空いていた和泉さんの席にすわろうとしているらしい。そこで隣にいた斎藤さんにその席にすわってよいか尋ねている様子なのだが、斎藤さんにしてみればそんなこと聞かれても困るといった具合でらちがあきそうにない。とりあえず私は二人に食べ物を配ってその場を離れた。

あとで聞くと、結局その男の無理が通ったらしい。別にこのことですわれない人が出たわけではないが、その強引さに多少の後味の悪さを感じつつ、電車は大阪へと向うのであった。