第10話 / 「2階」

「もしもし」。声のする方に振り向くと、エレベータ待ちの人を整理する係とおぼしき人が私たちに話しかけてきた。「2階まで階段では遠いですからエレベータをご利用ください」。「2階が遠い」とはどういう意味か解しかねたが、とくに急がなければならない理由もなかったのでエレベータを待つことにした。

待っている人が多かったので、次のエレベータには乗れないかもしれないと思っていたが、エレベータには意外と多くの人が乗れ、5人全員があっさりと次のエレベータに乗ることができた。エレベータは見るからに古く、しかし頑丈そうなひと昔もふた昔も前のタイプで、その重そうな見かけ通りゆっくりと上昇していった。そのためであろうか、「2階」までの到着の時間がずいぶん長く感じられた。やがてエレベータが「2階」に着き、私たちがエレベータを降りて周囲を見渡したとき、係の人がエレベータを使うように言ったこと、「2階」に到着するまで時間がかかったことへの疑問は氷解した。通天閣の「2階」は付近の雑居ビルをはるかに見おろす高さにあったのだ。確かに入口からここまで何があるわけではないから「2階」といえば「2階」なのだろうが、もう少し呼びようがあるだろうに、とこれには苦笑するほかなかった。

ここからさらに上にある展望台に上がるにはお金を払わなければいけないらしい。そこで私たちは入場券の売り場にできた列の後ろに並ぼうとした。そのときかすかにうわずった声が私たちを呼び止めた。