第14話 / 拙速

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| | TV |                    |
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| 深谷さん    +----------+  |
|             | 展望台へ |  |
|             +----------+  |
|  +--------+     A  |      |
|  | 入場券 |     |  +------+
|  +--------+     |小木曽さん
|     A  |        |
+--+  |  +--------+
   |  |(順路)
   V  |
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 | 1階へ |
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「2階」に着いてエレベータを降りると、目の前に「お帰りの方は左側にまわってください」と書いた案内板があった。左側というと来たときとは逆の方向だから、そのまま行くと「2階」に残っている深谷さんとはぐれてしまわないだろうか。私の頭の中をそんな不安がよぎった。でも1階と「2階」を結ぶエレベータはひとつしかなかったはずだから...、とさらに考えをめぐらせているあいだに、行動力あふれる小木曽さんはもう動きだしていた。

「おおい、深谷さん、こっちこっち!」。私たちばかりでなく周りの人も振り返るくらいの声で深谷さんに呼びかけた。もちろんそうしないと深谷さんに聞こえるわけもないが、
周囲の反応が少し気になった。小木曽さんの行為はどうやら人々の笑いを誘ったようだが、その理由は声の大きさばかりではなさそうだ。

とにかく深谷さんが私たちのところまで来て、5人は案内板のいう方向へと歩き始めた。するとすぐに人々の反応の理由がわかった。なんのことはない、案内板は、私たちが「2階」にのぼってきたところに、展望台へのエレベータの後ろをまわって戻ることを指示するだけのものであって、下に降りるのに別の通路があるわけではなかったのだ。当然、その通り道に深谷さんもいたわけで、何もエレベータを降りたところで深谷さんを呼ばなくても良かったのである。

このことに気がついて、私たちは思わず顔を見合わせて笑いだした。小木曽さんの行動は拙速といえば拙速だが、しかし間違った行為ではない。速すぎるための失敗は今回のように笑い話ですむが、遅すぎるための失敗はそれではすまないことが多い。小木曽さんのような人が一緒だと、大きな安心といくらかの笑いとともに行動することができる。