第16話 / 錯誤

意気揚々と歩く小木曽さんの後をほかの4人が追いかけていく。やがて問題の建物が近くに見えてくると、小木曽さんの足取りが少し重くなってきた。どうもそれはお目当てのものとは違っていたようだ。さらに近づいてみると、その建物もやはり映画館であることがわかった。

「おかしいなあ」。さかんに首をひねる小木曽さん。「確かに書いてあったんだけどなあ。このあたりはそれが有名ですって」。そこで小木曽さんは件のガイドブックをバッグの中から取りだし、その記述を捜し始めた。ところがそのようなことはガイドブックのどこを捜しても書かれていない。通天閣周辺は数多くの映画館があることで有名、と書いてあるだけだった。

「映画館って書いてあるのを勘違いしたんじゃない」。こう斎藤さんに言われると、小木曽さんは先ほどとは打って変わって自信なさそうに、「うーん、そうかなあ。でも...」とはっきりしない言葉を並べるばかり。結局、これは小木曽さんの単なる思い違いということで決着した。まあこうした思い違いをすること自体は珍しい話ではないし、一度思い込んでしまうとなかなか間違いに気がつかないという覚えは誰しも経験のあるところだろう。ただなにゆえに小木曽さんがその二つを取り違えてしまったかは、小木曽さん以外知る由もない。