第18話 / 露店

ジャンジャン横丁という名の亜空間を抜け出た私たちは、そのまま地下鉄の駅に向かうことにしたのだが、そこでやたらと目についたのが露店である。露店といっても多くは地べたにそのまま品物を並べているだけのもので、商品を置く台などを用意しているところは少ない。売物は、どこで拾ってきたのかというような「アクションカメラ」という雑誌を一冊だけポンと置いて座っているオヤジは別格にしても、どこもそのへんの粗大ごみ置場の方がよほどまともなものがありそうだという感じで、いったいここでどんな取り引きが行われているのか想像もできない。もっとも値段の方も300円の背広をはじめ、だまされたと思って払って本当にだまされたとしても惜しくない程度なので、話のネタに買う人がいるのかもしれない。先日、「パワーダービー」という5分で遊ぶ気をなくすクソゲーに7,000円も払ってしまった私は、その思いをいっそう強くする。

おかしなのは露店ばかりではない。まともな構えをした普通の店も少し変だ。どうやら同じ人が経営していると思われる同じ名前の喫茶店が3軒並んでいて、そんなに繁盛しているのかと中を見てみると3軒ともがらがらだったり、そうかと思うと、決して古本屋ではなく一応新刊を扱う本屋であるにもかかわらず、何ヶ月も前の雑誌を堂々と並べている店があったりと、どうもこのあたりにもジャンジャン横丁の作り出す空間のゆがみが及んでいるようだ。このままここにいては通常の感覚が失われる。そんな不安が頭をよぎったとき地下鉄の駅の入口が見えた。私たちはそそくさと駅の中へと入っていった。