第22話 / 碧山荘

昨年碧山荘に宿泊している山本君が、その碧山荘が見えたと言って指を差した。碧山荘は古い造りの建物で、前に建っている宝塚グランドホテルとの対照によって古さがいっそう際立つ。「あれがそうなの」。斎藤さんが驚いたように言う。「いや、昔の知多会館よりずっとまともだよね」と、深谷さんが本人以外ピンと来ないたとえを持ち出す。昔の知多会館のことはわからないが、確かに造りこそ古いものの建物自体は手入れが行き届いているのかきれいだった。

門のところにインターホンがあり、そこで一度断ってから中に入らなければならないかとも思ったが、まあ別に良いだろうということでそのまま玄関に進んだ。「場所が宝塚だけに、『♪いらっしゃいまーせー』とか言って歌いながら迎えてくれるかもしれない」と斎藤さん。実は斎藤さん、宝塚に着いてからずっとこの調子で、何かにつけて節をつけて歌い出す。ひょっとすると今回のツアーにも、阪神競馬より最初冗談まじりに言っていた宝塚歌劇の方を見たくて乗ってきたのかもしれない。

残念ながら宿のおばさんはごく普通の応対で迎えてくれた。宿に直行することになっている和泉さんがあるいは先に着いているかと思っておばさんに尋ねたが、まだ誰も来ていないとのこと。私たちはおばさんに導かれて部屋に入り、その後で宿の一通りの案内を受けた。そして後から大勢人が来ることになっているから、できるだけ早くお風呂に入ってほしいと言われた。それならすぐにお風呂に入ろうかということになったのだが、ただ一人行動を共にしない人がいた。