第31話 / 情報

ようやく眠りについた私をふたたび目覚めさせたのは小木曽さんの声だった。「たいへん、たいへん、大雪だわ」。部屋に入ってくるなりこう言うと、みずから障子を開けて外の風景を私たちに示した。そこで私は布団から起き上がって外を見たが、なるほど見事に雪が積もっている。私と和泉さんがそれに驚くと、小木曽さんはどうだと言わんばかりの勝ち誇った様子を見せた。別に小木曽さんが雪を降らせたわけでも、また雪が降ることを望んでいるわけでもないのだが、他人より早く情報を得るということはそれ自体が喜びとなるのだろうか。その一方で斎藤さんの妙にさめた態度がおもしろい。斎藤さんは夜中に部屋を出たときに雪が降っていたことを知っていたらしい。ここであえて小木曽さんと対照的な行動をとることで、人に先んじていた喜びを味わっているのかもしれない。

「まったく、和泉君の心がけが悪いから雪が降ってしまった」。「ちょっと小木曽さん、何でですか」。どうもこの二人は昨日のことをまだ引きずっているようだ。ひょっとするともっと前から似たようなことを繰り返しているのかもしれない。そんな中、山本君はテレビを見て冷静に情報を集める。テレビはいやなニュースを私たちに告げる。名神高速が雪で通行止めになっているというのだ。阪神競馬場で開催があるときは、競走馬は滋賀県栗東町のトレーニングセンターから競馬場に輸送される。名神が不通となれば当然輸送が困難になる。競馬開催はかなり微妙だ。

私たちの頭の中を最悪の事態への予感がよぎったとき、宿のおばさんが部屋に入ってきて、朝食の支度ができたことを告げた。