第41話 / 自信

地下鉄御堂筋線の改札口の向かいには阪神百貨店の入口がある。それを見た小木曽さん、「そうそう、阪神百貨店の地下のいか焼きがうまいんだわ」と思い出したように言う。これを聞き逃す和泉さんではない。ほとんど瞬時に反応する。「そうなんですか。じゃあ食べに行きましょうよ」。「え、行くの。本当に行くんだったら場所知ってるから案内するよ。みんなどうします」。何だかんだ言っても、やはりこの二人には波長がぴたりとあうところがあるらしい。ほかの人たちもかなり空腹を感じていたところだから、いか焼きを食べることに異存はなく、小木曽さんの先導について阪神百貨店の中に入っていった。

中に入っても小木曽さんは目的地に向かってずんずん進んでいく。「知っている」というだけあって自信にあふれた足取りだ。ところがその足取りが急に重くなり、ついにはぴたりと止まってしまった。どうしたのかと思って小木曽さんを見ると、さかんに首をかしげて言う。「おかしいなあ。確かこの辺だったんだけどなあ」。だが周囲にはそれらしい店はなく、その先には行き止まりが見えている。

「そこに案内板がありますよ」。山本君が指を差す方向に店内の案内図があった。「あ、何だ。向こうの方だったのか。今度は大丈夫」。案内板を見てこう言うと、小木曽さんはふたたびずんずん歩きはじめた。