第46話 / 逸機

カレー屋の前を後にした私たちの後ろから大きな声が聞こえてきた。振り返るとリヤカーを引っ張っているオヤジがこちらに近づいてきた。声は大きいのだが言葉が判然とせず、何を言っているのかさっぱり聞き取れない。その分、気味の悪さが大きくなる。これは変に関わるべきではないと直感した私たちは、そのオヤジから視線をはずすようにして声が通り過ぎるのを待った。まったくこの界隈には一癖も二癖もありそうな人間がごろごろしている。

大声が遠く離れたことを確認して視野を本来の位置に戻すと、一本の脇道が目に止まった。その先にはお好み焼き屋の看板がある。こんな場所にある店ならすいているかもしれない。そんな期待を抱いて私たちはその店へと向かった。私たちの推測はおそらく正しかったのだろう。だが遅すぎた。その店のシャッターは固く閉ざされており、もはや営業していないことは誰の目にも明らかだった。

欲しいものを目の前にしながらそれを手にすることのできないイライラがつのる。もうお好み焼きでなくてもいいや。そんなあきらめにも似た気分で脇道の角をひとつ曲ると、私たちに思わぬところから声がかかった。