第47話 / 疑問

「ちょっと、おにいちゃん。どう、はいらへん?」。それはのぞき部屋の呼び込みのお兄さんだった。この界隈ではのぞき部屋の看板を手にたたずむ人たちがやたらと目についたが、まさかこんな人通りもろくにない脇道でまでそんな人に遭遇するとは思いもしなかった。それにしてものぞき部屋とは不思議な商売だ。そもそもこんなところにあえて行こうという人がどれほどいるのか疑問だし、それでいてこんなに数があるのはどうしてだろう。

呼び込みのお兄さんの勧誘はさらに続く。「ねえ、どう。安くしとくよ。みんなまとめて千円でいいよ」。まるでバナナの叩き売りか、得体の知れない品物のテレビショッピングだ。こんなことを言われたら、ますますもって怪しさを覚えるわけで、いよいよ足が遠のいてしまう。まったくこんな勧誘に乗ってのぞき部屋に行こうと思う人間の顔を見てみたい。

そんなことを考えながらそのお兄さんの前を通りすぎようとしたとき、後ろからこんな声が聞こえてきた。「ほお、千円か」。振り返ると見慣れた顔がそこにあった。私が見たいと思った人間の顔をこんなに早く、そしてこれほど身近に見つけることができようとは。これには私もただ苦笑するほかなかった。