第48話 / 遅疑

声の主は、やはりというか、小木曽さんだった。「千円だったら...。みなさんどうします」。どこまで本気で言っているのかはかりかねて返事を躊躇していると、すかさず和泉さんが反応する。「いいですね。行きましょうか、小木曽さん」。こういうときの二人の呼吸は見事なほど合っている。

「俺は行かないよ」。斎藤さんがあきれたように言う。「こんなの千円だってもったいないよ。それより早く飯を食いに行こうよ」。深谷さん、山本君も斎藤さんの言葉をもっともだという顔で聞いている。ところが小木曽さん、和泉さんはそうは思っていないようで、未練がましく呼び込みのお兄さんの方を見る。

「そんなに行きたいんなら行ってくりゃあいいじゃん。俺らは先に飯食って待ってるから」。斎藤さんが突き放すように言う。「あ、いや、別にどうしても行きたいというわけではないんですけどね。じゃあご飯を食べに行きましょうか」。小木曽さんはここで方向転換。和泉さんはまだがんばる。「ええっ、小木曽さん行かないんですか。一緒に行きましょうよ」。

「和泉一人で行ってこいよ。ちゃんと待っててやるから」。さすがの和泉さんも、斎藤さんのこの一言でとどめを刺された感じだ。「いや、いいです。ご飯を食べに行きましょう」。「別に遠慮することないじゃん。行ってこいよ」。「いえ、本当にいいですから」。これで和泉さんも完全降伏。私たちはふたたびお好み焼き屋を捜すことにした。