第50話 / あこがれ

私はお好み焼き屋に行くと、お店の人がお好み焼きを焼く様子に見入ってしまう。その姿は子供のときからあきるほど見ているものなのに、今でもしげしげと見つめてしまう。その鮮やかな手さばきを何ごともないようにこなす姿へのあこがれは、あるいは自分の不器用さからくるものなのかもしれない。この店の人の焼き方も見事で、一通りの作業が終わった後で「ではこちらが良いというまで待っていてください」と言われると、「ははっ、おっしゃる通りにいたします」という気分にすらなる。

店の人の合図でソースに青のり、鰹節をまぶす。ソースの焼けるにおいがいやがうえにも食欲をそそる。さっそくこてを手に取ってお好み焼きを食べる。おいしい。やはりお好み焼きはお好み焼き。広島風であろうと関西風であろうとおいしいものはおいしい。

私と小木曽さん、和泉さんは、ビールを飲み、お好み焼きを食べながら競馬談義に花を咲かせる。和泉さんは馬券を買うより、馬を持つことの方に興味があると言う。そこで自然に共同馬主クラブの方へと話題が移る。小木曽さんは「でも1/100の権利じゃなあ」と言う。すると和泉さん、「でもダービーを勝てば1/100でも130万円ですよ。やっぱりこういう夢を持たなくちゃ」。「うーん、でもなあ」。

同じ競馬を楽しむといっても、人それぞれに楽しみ方はずいぶん違う。でもそれが競馬の一番おもしろいところなのかもしれない。そうするうちにお好み焼きも食べ終わり、私たちはお好み焼き屋を後にした。