第52話 / 背水

私は和泉さんと一緒に新聞を買い、禁煙である最上階に行く。ところが和泉さん、ここまで来ていながら遊ぶためのお金がないという。最初のレースで外してしまうと、もう帰りの電車賃すら危なくなるとか。おのずと新聞を見ながらの検討にも熱がこもる。

一方、私はというと、新聞は出走馬の確認程度で、あとは場内テレビに写るパドックの様子をじっと見つめる。ただWINSのテレビはすべての馬を一回ずつでも見られれば良い方で、払い戻し金の発表やつまらないCMなどのためにすべての馬を見ることができないことも少なくない。だから私はふだんWINSで馬券を検討することはほとんどなく、今回のような買い方は久しぶりの機会となる。

そのためかどうかはわからないが、馬券の成績ははかばかしくない。お得意の複勝が時々当たるくらいで、肝心の勝ち馬の予想はさっぱりだ。それとは対照的に和泉さんは着実に馬券を的中させていく。びっくりするような大穴こそないものの、少ない点数で堅実に資金を増やす。崖っぷちで勝負をしているだけに私とはさすがに集中力が違う。

しかし不思議なもので、和泉さんに限らずなぜかふだんはこういう買い方ができない。今回のように堅実に資金を増やす買い方もできるのに、どうしてもオッズの高い方をマークしてしまうのは、もはや人の本性と言うべきなのだろうか。そのことがわかっていながらも、つい人気のない馬へと目が行ってしまうのだった。