第53話 / 収支

私と和泉さんが次のレースについての展望などを話していると、ふらりと斎藤さんがやってきた。「どう、調子は」。斎藤さんは私たちの顔を見るなり聞いてきた。「いやぁ、まあまあですよ」。結構当てているはずなのに、和泉さんの答えは控え目だ。「なかなか高笑いという訳にはいきませんね」。「ふーん」。心なしか斎藤さんの和泉さんを見る目がうらやましげだ。

実は斎藤さん、このころ連敗街道を突き進んでいて、とにかく馬券が当たらない状況にあったらしい。この連敗は春の中京でごひいきのヤマニンの馬が勝つまで続く。しかしこのときはそうした状況を知る由もない。やはり勝者と敗者はWINSでは共存できないのだろうか、やがて斎藤さんは私たちの前から姿を消していった。

さてそうするうちに迎えた小倉のメインレースが人気サイドでおさまったとき、私の馬券は紙屑となり、トータルの収支はマイナスに転じた。一方の和泉さんはこのレースもきちんと押さえ、見事にトータルでもプラスを計上したらしい。和泉さんには喜びというよりも安堵の表情がうかがえた。

和泉さんが払い戻しをすませるのを待って、私たちは決められた集合場所に向かった。集合場所にはあっさり全員がそろい、皆でその日の成績を話してみると、プラスで終わったのは和泉さんだけのようだ。やはり賭事はある程度のリスクを背負わなければ勝てないのかもしれない。