第59話 / 回帰

そうこうするうちにカレーも食べ終わり、私たちは自由軒を後にした。自由軒の勘定は店に入る前に言っていたように和泉さんが負担した。さすがにこの日の競馬で唯一プラスを計上した人は太っ腹だ。店を出た頃にはちょうど良い時間になっており、私たちはそのまま駅に向かうことにした。

ところがその途中で再び和泉さんがぴたりと足を止める。おやと思って振り返ると、そこは映画館の前だった。何かおもしろそうな映画でも見つけたのかと思ったのだが、よく見ると和泉さんの視線は映画館そのものではなく、そのそばの小さなショウウィンドウに向けられていた。いったいそこに何があるのだろうか。私たちもそのウィンドウをのぞきこむ。

見るとそこにはあやしげなタイトルのビデオが並んでいた。「和泉、何つまんないもの見てんだよ」。「いやぁ、ちょっと。いいなとおもって」。「ん、どれどれ。ほぉ、これはなかなか」。斎藤さん・和泉さん・小木曽さんの3人のペースは最後まで変わらない。しばらくそこで立ち止まった後、私たちはまた駅の方に歩きだした。

するとまた和泉さんが「ちょっと待っていてください」と言い残し、そばの小さな酒屋に入っていった。今度はいったい何だという感じで5人が顔を見合わせる。そして小木曽さんが言う。「まったく、団体行動ができんのだから」。