第62話 / 改札

和泉さんを除く5人はプラットフォームへと向かう。ところが先頭を行く斎藤さんが自動改札機に切符を差し込むや、おなじみの警報が鳴り始めた。あの警報音は日常的に耳にするもので、ふだん駅の中で聞こえてきたとしても気にすることはほとんどない。しかしそれは他人事であるからであって、いざ自分たちが通りすぎようとする改札機が鳴り始めると、非常に追いつめられた気持ちになるようだ。そのことは、私たちが切符を確認するよりも前に周囲を見回してしまった行動にも現れていた。

このとき改札機が警報を鳴らしたのは、切符の始発駅が気に入らなかったためらしい。私たちが持っている切符が鶴橋からになっていることは前に言及した通りである。人間がチェックすれば行き先を見て問題なしと判断するところだが、機械の方は文字どおり機械的な判断しかできないわけだ。駅員のいるはしっこの改札で切符を見せるとすんなりと通してくれた。

そのあと私たちは売店で思い思いの飲み物や雑誌などを買い、プラットフォームに降りた。プラットフォームは片面に名古屋への特急が発着し、もう一面に通常の通勤電車が発着する。当然のことながら発着の頻度はまるで違い、こちら側には一向に電車が入ってこないのに対して、反対側にはひっきりなしに電車が到着しては大勢の人を飲み込んでいく。

やってこないのは名古屋への電車だけではない。やはりというべきか、和泉さんもなかなか姿を見せない。「和泉君はいっつもこうなんだから。このあいだのマラソンのときもそうだったし。彼はもうあてにせんとこ」。「来なかったらほっときゃいいじゃん」。この手の会話もこれで聞きおさめだろうか。やがて和泉さんが私たちの前に姿を現した。