第3話 / 名鉄特急

武豊駅に着いた私たちは、8時54分発の特急に乗って名古屋に向かった。私が知多に来た頃は座席指定券の必要な特急を利用することはほとんどなかったが、最近はむしろ急行に乗る機会の方が少ない。深谷さんはそれは年をとった証拠だという。深谷さん自身、今は特急が出た直後であっても30分待って次の特急に乗るそうだ。そう考えるようになる過程はやはり大きな人生の転機である、と深谷さんはしみじみ語る。

私たちが乗った列車は、私がふだんからよく利用しているものだ。これに乗ると9時30分頃にWINSに着く。馬券の発売は9時からだが、発売開始直後は結構混雑する。それが一段落するのがちょうど9時30分なのである。

ただ私はこの列車に武豊ではなく南成岩から乗ることが多い。というのも金山までの料金が両者のあいだで60円違うからである。310円余分に払って特急に乗る者が60円を惜しむというのも妙な話かもしれないが、私の感覚だとこの60円の方がずっともったいないと感じるのである。そんなことを考えているあいだに、私たちを乗せた列車は名古屋に着いてしまった。