『サンフレッチェ情熱史』

サンフレッチェ広島のオフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』発行人兼編集長である中野和也氏が記すサンフレッチェ広島の歴史。といっても書かれているのは主に久保允誉氏の社長就任以降の話であり、しかもペトロヴィッチ監督時代のJ1復帰以降の記載が案外さらっと流されている。現在の広島の成功がミシャの功績によってもたらされたのは確かだが、その功績も現在の久保会長が作った変革の流れがあってこそ初めて成果として結実したことがわかる。それは浦和が広島からミシャを含めて少なくない選手を引き抜きながら、広島がJ1に復帰してから一度も広島の成績を上回れていない事実と重なる。つまりいくら監督や選手を引き抜いたところで、浦和には久保会長にあたる人材がいないと言うことなのだろう。彼が1998年から破綻寸前の広島を15年近くかけて根気強く立て直しできあがった基盤の上に今日の成功があり、それはたやすくほかのクラブが真似できるものではないように思う。